老犬17歳のことなんですが、最近痩せてきてしまっています。
老犬なので、太りにくいし痩せてしまうのはわかっていますが、何とか太って欲しいんです。
何か良い方法やフードがあれば教えて下さい。
愛犬の体を撫でていて、以前より背骨がゴツゴツと手に当たると感じたら、ちょっと心配になりますよね。
老犬は、筋肉や脂肪が落ちて骨ばってくることがあり、それ自体は加齢に伴う自然な変化でもあります。
しかし、急激な体重減少や背骨の突出は、何らかの病気のサインである可能性も否定できません。
そこで本記事では、
- 老犬の背骨がゴツゴツと感じられる原因
- それが示すかもしれない代表的な病気
- 犬が痩せていると感じた時の対処法
以上について解説します。

2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒。同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務。犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年より1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修、記事作成など幅広い業務を行っている。
目次
老犬の背骨がゴツゴツ感じる原因と考えられる病気
老犬の背中を触ったとき、背骨のゴツゴツとした感触が目立つのは、体脂肪や筋肉が減って痩せてきたサインです。
犬は加齢に伴い、筋肉量が徐々に減少していきます。
これをサルコペニア(加齢性筋肉減弱症)と呼び、筋力が落ちることによって背骨や肋骨に触れやすくなるのです。
サルコペニアになると筋肉量の低下に伴い、運動量や基礎代謝も低下し、怪我や病気のリスクが高まります。
しかしながら、骨張る原因は単なる老化現象だけではありません。
背骨のゴツゴツ感が目立つほど痩せている場合、以下のような病気が潜んでいる可能性もあります。
歯や口のトラブルによる食欲の低下
例えば、口内炎や歯周病など口腔内の病気があると、口の痛みによってご飯が食べられず痩せてしまうことがあります。
そして、歯石や歯周病が進行しているケースも考えられるので、口の中に異常がないかチェックしましょう。
口臭やよだれ、硬いものを嫌がる様子があれば、口腔ケアや治療が必要かもしれません。
内臓の病気
老犬が痩せて背骨が出てくる原因に、 慢性疾患(徐々に進行する病気)が隠れていることもあります。
その中でも代表的なのは腎臓の病です。
老犬の多く見られる「慢性腎臓病」という病は、食欲不振や嘔吐などが徐々に現れ、進行すると筋肉や脂肪が落ちて痩せてきます。
慢性腎臓病は初期の発見が難しく、多飲多尿(大量に水を飲み、おしっこの量が増える)を経て体重の減少がみられる場合に、病の可能性が高まります。
また、心臓病による全身性の消耗状態(心臓病性悪液質)により、普段通りの食事でも、肋骨や背骨部分が骨ばってくる場合があります。
参考:茶屋ヶ坂動物病院「循環器科 よくある心臓病の症状」
この他、「腫瘍(がん)」も痩せる原因のひとつにあり、肝臓や肺などの臓器にできた場合、痩せて背骨が目立つ頃には、病状がかなり進行している可能性があります。
老犬は腫瘍の発生率も上がるため、体重が減少したり、体格に変化が現れていないか、普段からよく観察するようにしましょう、
ホルモン異常など代謝性の病気
糖尿病もシニア犬で注意すべき病気の一つです。
糖尿病になると体内のインスリンが不足し、糖分が細胞に行き渡らず、食欲があっても体重が減ります。
また、水を大量に飲み、おしっこも増えるのも特徴的です (※多飲多尿の症状は腎臓病でも見られます)。
副腎皮質機能亢進症(別名クッシング症候群)も中高齢の犬に多く見られ、多飲多尿、皮膚の薄化や色素沈着、そして筋肉が減り骨が目立つといった症状が出ます。
ホルモンの病気は、食欲や体重の変化が現れることが多いので注意が必要です。
参考:ガレン動物病院「副腎皮質機能亢進症(別名クッシング症候群」
消化器疾患や寄生虫
胃腸の病気によってうまく栄養を吸収できない場合も、体は痩せ細っていきます。
そのため、下痢や嘔吐などを伴う、消化器系の疾患による体重の減少には注意が必要です。
例えば、犬の慢性的な消化器疾患「慢性腸症」は、三週間以上も持続的に下痢が続き、食欲不振により痩せてしまうのです。
消化器以外に異常所見が認められる場合は慢性腸症ではなく、ジアルジアなどの寄生虫感染も考えられます。
定期的に虫下し(虫を駆除する薬)をしていない場合は、動物病院で寄生虫検査の相談をしましょう。
参考:品川wafどうぶつ病院「疾患の解説」
以上の通り、背骨がゴツゴツと感じられるのは、様々な原因が考えられます。
特に、
- 「痩せ方がひどい」
- 「触ると骨ばる」
- 「なかなか体重が戻らない」
- 「水をよく飲み、尿の量が多い」
といった状況に当てはまる場合は、早めに動物病院で検査を受けることをおすすめします。
もちろん高齢に伴い、徐々に痩せること自体は犬にもよくあることです。
ただ、「歳だから」と決めつけずに、獣医師に相談し適切な処置を行いましょう。
犬が痩せていると感じた時の対処法
愛犬が細くなり体重も減ってきた様子であれば、まずは獣医師の診察を受けて、原因となる病気がないか確認することを優先しましょう。
当然ですが、病気が見つかった場合は、各治療を行う必要があります。
例えば、腎臓病なら腎臓療法食への切り替えや投薬、糖尿病ならインスリン療法などが挙げられます。
特に大きな病気がなかったとしても、犬の体重・筋肉量を維持するために、以下の日常生活でできる工夫を取り入れていきましょう。
食事の見直しと栄養管理
痩せた時の対策でもっとも重要なのが、食事内容の見直しです。
老犬は若い頃より基礎代謝が落ち、必要なカロリーや栄養を摂取することが難しくなります。
一方で、筋肉を維持するためのタンパク質の量は、若い頃よりむしろ高くなることが知られています。
筋肉や除脂肪体重(LBM)を落とさないためには、腎臓病などの特定の病がない場合でも、十分な量の良質なたんぱく質を与えることが推奨されています。
具体的には、健康な成犬で体重1kgあたり約2.5g以上のタンパク質が目安とされており 、シニア犬ではこれを下回らないよう注意する必要があります。
体重は、骨、内臓、筋肉、体脂肪の重さの合計値です。この内、体脂肪を除いた重さを、除脂肪体重(LBM)と言います。
引用:つだ動物病院「肥満は万病の元 犬と猫の減量大作戦」
市販のシニア用フードは、高タンパク・低カロリーのものが多いので活用すると良いでしょう。
そもそも犬は本来、肉食寄りの動物で、炭水化物があまり得意ではありません。
シニアになると消化機能自体が低下し、炭水化物は負担が大きくなることから、高タンパク・低炭水化物のフードは、老犬の体に負担をかけにくいとされています。
参考:Purina Institute「体型の異常 犬と猫のサルコペニア」
そして、食事の与え方も工夫しましょう。
まずは愛犬の食事量や運動量、体重の変化を記録します。もしも元気なのに痩せているなら、カロリー不足の可能性があります。
市販のフードの表示はあくまでも目安です。痩せ気味なら少し増やしてみたり、1回の食事量が少ない子には、1日3〜4回に分けて与えてみましょう。
また、嗜好が変わったり、食べるのが辛そうであれば、ウェットフードやトッピングで味を変えてみましょう。
噛みにくそうにしている場合は、小粒タイプやふやかしたものに。
シニア向けのおやつは柔らかく、歯の弱った子にも適していますよ。
適度な運動と生活環境の工夫
痩せた老犬でも、無理のない範囲で体を動かすことは、筋力を維持するために必要なことです。
散歩や室内遊びを続けることで、筋肉の衰えを防げます。
若い頃のような激しい運動は避けて、関節に負担の少ないリハビリ運動や、マッサージ、ストレッチなどを行います。
犬の体に触れて、骨ばってないか、しこりや痛がる場所はないかと、体のチェックをしましょう。
そして生活環境もシニア用に変えていくこと。
足を滑らせて怪我をしないように、床にマットを敷いたり段差をなくす。
食事や水の器は少し高いところに置き、首や腰に負担がかからないようにします。
足腰が弱まり、うまくトイレができない場合は、後ろからそった支えてあげましょう。
まとめ
以上の通り、老犬の背骨がゴツゴツと感じられるのは、加齢による筋肉や脂肪の減少と、シニア期に多い病気や疾患が原因です。
飼い主は日頃から、犬の体重や食事・飲水量、排泄の様子を観察し、小さな変化も見逃さないことです。
特に、急激な体重の減少や多飲多尿、嘔吐・下痢などの症状を伴う場合、できるだけ早く獣医師に相談しましょう。
犬は言葉を話せませんが、いつものように接していれば、身体の変化に気付けるはずです。