私は、盲導犬がかわいそうに思えて仕方ありません。
目の不自由な方のサポートをするのは、同じ人間がすればいいと思うのですけど…
みなさんは、盲導犬についてどんな気持ちをお持ちですか?
盲導犬は視覚障害者にとって、とても大切な存在です。
そんな人の助けとなる盲導犬に対し、「かわいそう」と否定的な考えを持つ人もいます。
なぜ、かわいそうと思っているのでしょうか?
本記事ではこのことについて調査しましたので、その理由や盲導犬について詳しく解説します。

2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒。同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務。犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年より1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修、記事作成など幅広い業務を行っている。
盲導犬がかわいそうと言われる理由
盲導犬は視覚に障害を持つ人を助けているのに、なぜ「かわいそう」と言われているのでしょうか?
調査したところ、盲導犬は常に多くの我慢を強いられることが理由として挙げられます。
例えば、外出中は好きなタイミングでトイレに行けず、我慢することがあります。
混雑した電車の中では窮屈な体勢を強いられたり、周囲の人に足を踏まれたり、嫌がらせをされることもあります。
しかし盲導犬は、どのような場面でも怒ったり鳴いたりせず、常に冷静にいます。
こうした姿を見て、周囲の人は「かわいそう」と感じてしまうようです。
しかしながら、引退した盲導犬を迎え入れた人は、その犬の様子から、幸せな生活を送っていたと感じるそうです。※1
散歩もろくにせず、躾のされていない、多頭飼いで野放しにされている。
そのような犬に比べたら、ずっと飼い主の側で過ごせる盲導犬の方が、よっぽど幸せかもしれません。
※1 盲導犬は引退すると、ボランティアのリタイア犬奉仕家庭に引き取られ余生を過ごします。
盲導犬は何頭いるの?日本と海外を比較
視覚に障害を持つ人をサポートしてくれる盲導犬ですが、日本には何頭いるのでしょうか?
日本補助犬情報センターによると、2025年3月31日現在で、768頭の盲導犬が実働しています。
また、これから盲導犬として活躍する育成犬は、117頭いる模様です。
しかしながら、日本の視覚障害者は約31万人おり、そのうち盲導犬を必要とする人は3〜4千人のため、明らかに盲導犬が足りていなません。
では、海外諸国でも盲導犬の数は少ないのでしょうか?

日本を基準(1)とした場合、
- ニュージーランド、イギリス:10.4倍
- オランダ:6.6倍
- アイルランド:3.8倍
- アメリカ:3.7倍
- オーストラリア:3.4倍
- フランス:3.4倍
- ドイツ:2.9倍
- スペイン:1.8倍
このように、どの国も盲導犬の数は日本より多いのです。
海外との大きな差がある要因には、盲導犬を希望してから受け渡しに至るまでの期間が、海外は3ヶ月なのに対し、日本は1年半もかかるためと言われています。
参考
日盲社協自立支援施設部会 発行図書「2024年度 盲導犬次報告書」
日本補助犬科学研究「世界から見た日本の盲導犬育成事業」
盲導犬の役割と犬種
盲導犬の存在はよく知られていますが、実際にはどのような役割を担っているのでしょうか。
盲導犬は、目的地を伝えても連れて行ってくれません。
視覚障害者が頭の中で目的地までの道順を描き、盲導犬が示す角や段差の情報と照らし合わせ、指示を出して歩きます。
盲導犬は、
(1)角を教える、(2)段差を教える、(3)障害物を教える
この3つの仕事を組み合わせて歩行し、目的地まで誘導するのです。
また、盲導犬の犬種ですが、
- ラブラドール・レトリーバー
- ゴールデン・レトリーバー
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
これら3犬種と、その交配種が一般的です。
過去には、ボーダーコリー、レオンベルガー、イタリアン・スピノサ、アイリッシュ・ウォーター・スパニエル、フラットコーテッド・レトリーバーなども盲導犬として活躍していました。
参考:公益財団法人「日本盲導犬協会」、Guide dogs
盲導犬を含む「使役犬(しえきけん)」の種類
盲導犬は、数ある「使役犬(しえきけん)」の中の一種です。
使役犬とは人のために働く犬のことで、様々な試練や訓練を経て人々の役に立っています。
使役犬の種類 | 役割 |
盲導犬 | 視覚障害者のサポート。危険や障害物を回避する。 |
聴導犬 | 聴覚障害者のサポート。人の声、ドアのチャイム、アラームなどの音を知らせる。 |
介護犬 | 体が不自由な人をサポート。ものを拾う・持ってくる、衣服の脱衣補助、スイッチの操作など。 |
警察犬 | 臭いをもとに犯人や犯人の遺留品、行方不明者を捜索する。 |
災害介助犬 | 地震や台風、土砂崩れなど被災した人を捜索する。 |
この他、猟犬、牧羊犬、探知犬、セラピードッグなど、人々をサポートしてくれる犬はたくさんいます。
まとめ
盲導犬は、たくさん我慢をしているように見えるかもしれませんが、実際には飼い主から愛情を受けて暮らし、強い信頼関係を築いています。
ただ残念ながら、日本ではまだまだ盲導犬の数が少なく、必要としている人に行き渡らない現状があります。
盲導犬の役割をきちんと理解することが、今後の支援や普及にきっとつながることでしょう。