田舎で犬を外で飼うのはいけないことでしょうか?
最近では「犬は家族」「外飼いはかわいそう」なんて声も増えていることから、外で犬を飼っている人は肩身を狭く感じています。
とは言え、犬の飼い方は人それぞれであり、特にこれといった決められたルールは存在しません。
そこでこの記事では、犬の外飼いの是非や現代の考え方、田舎ならではの事情、そして安心して飼うためのポイントをわかりやすく解説します。

2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒。同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務。犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年より1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修、記事作成など幅広い業務を行っている。
目次
田舎で犬を外飼いするのは“時代遅れ”?
かつては、犬といえば番犬として庭で飼うのが当たり前でした。
特に田舎では、庭に繋がれて吠えてくれる犬は、「家の守り神」のような存在でもありました。
また、ひと昔前は、家の中で犬を飼うのは御法度で、外で飼うのが当たり前という風潮が実際にあったのです。
江戸時代になると、大名など位の高い人たちの間で「座敷犬」として室内で飼われるようになり、やがてその文化が一般層にも広がっていったとされています。
昨今においては「犬も家族」という意識が強まり、室内で過ごすのが主流となっています。
その背景には以下のような変化があります。
- ペット = 家族という価値観の変化
- 小型犬の人気による室内飼育の増加
- 世間の「外飼い = かわいそう・虐待」という空気感
世の中の考えや反応が変わったとはいえ、「時代遅れ」と言い切るのもちょっと乱暴ですよね。
というのも、田舎ならではの事情や環境もあるからこそ、単純に「正解・不正解」では片づけられない問題だからです。
「田舎だし、外で大丈夫だよね?」という飼い主の本音
田舎で暮らしていると、「別に外で飼ってもいい」と思うのも無理はありません。
なぜなら、田舎暮らしは外と中の境界がゆるやかで、犬も人も自然と共に生活するスタイルが根付いているからです。
家の外にいることは特別ではなく、ごく普通のこととして受け入れられてきた文化が背景にあります。
都会の基準で見れば、犬を外で飼うことはあり得ないのかもしれません。
でも、全てを都会の基準で考える必要はなく、田舎には田舎の環境や生活リズムがあって、その中で「犬とどう暮らすか」を考えるのは、ある意味とても自然なことです。
例えばおばあちゃんの家で、犬が庭で日向ぼっこしている光景に、違和感を覚える人は少ないはずです。
昔ながらの暮らし方も、ちゃんと愛情を注いでいるのであれば、それはそれで「アリ」ではないでしょうか。
犬を外飼いするメリットとデメリット
外飼いには良い面もあるし注意すべき点もあります。
以下は、犬を外で飼うメリットとデメリットです。
犬を外飼いするメリット
- 掃除、衛生面の手間が省ける
- 来客時に気を遣わなくて済む
- 家具や物の破損リスクがない
- スペースを必要とする大型犬には快適
- 番犬として防犯の効果がある
犬を外飼いするデメリット
- 気温変化の影響を受けやすい
- 虫やダニなどに刺される
- 病気やケガなど体調の変化に気付きにくい
- スキンシップの頻度が減る
- しつけしにくい
- ご近所とのトラブルになりかねない
- 脱走や事故のリスクが高まる
ご覧の通り、確かに外飼いにはメリットもありますが、それ以上に注意すべき点も多いことが分かります。
特に田舎であっても、真夏の暑さや真冬の寒さは命に関わることもあり、「外にいれば自然に育つ」という感覚だけでは不十分です。
また、外にいる時間が長い分、犬との距離が物理的にも心理的にも離れやすくなる傾向があります。
だからこそ、外飼いを選ぶのであれば「ただ外に出しておくだけ」ではなく、快適な環境づくりと、こまめな気づかいが不可欠です。
実際に外飼いしている人のリアルな声
外飼いを選んでいる飼い主さんたちの声を集めてみると、意外にも肯定的なものばかりでした。
以下はSNSなどネットで見つけた投稿です。
「フレンドリーで通りすがりの人に可愛がってもらっています。」
「 室内飼いでアレルギーを発症するケースもあるし、家の中でずっと吠えている犬に比べたらうちの子は幸せかと。」
「外にいるのが大好きで、雪が積もってもいるのに外にいたがります。」
「ドッグランのような広い庭を楽しそうに走っている。」
「世間は外飼いを『虐待』という言葉で片付けているけど、犬自身が外で過ごすのを選択しているし、必要な時は家に入れていますよ。」
これらの声から分かるのは、「外で飼う = かわいそう」ではないということ。
むしろ、犬の性格や環境によっては、『外のほうが向いている場合もある』ということです。
外に出ることが好きな犬、広いスペースを走り回ることに喜びを感じる犬にとっては、自然の中でのびのび暮らせる外飼いはむしろ幸せなこと。
また、アレルギーや衛生面の観点から、人や犬双方にとって外飼いが適しているケースもあるようです。
もちろん、外で飼うからといって放置していいわけではありません。
飼い主とのふれあいや、気温・天候に合わせた配慮があってこそ、外でも快適に過ごせるのです。
「外飼い = 時代遅れ」「外飼い = 虐待」
といった偏ったイメージがありますが、実際はきちんと愛情を持って飼っている人も多く、犬自身が外の生活を楽しんでいるケースも確かに存在しているようです。
外飼いを選ぶなら、これだけは守りたい4つのポイント
「やっぱり外で飼いたい」と考えている人は、少なくとも次のポイントを押さえておく必要があります。
- 安全な環境を整えること
- 気候対策をすること
- 心のケアとスキンシップを忘れないこと
- 感染症の予防をすること
では以下で詳しく解説します。
安全な環境を整えること
まず何より大切なのは、犬の命と健康を守るために、安全な環境を整えることです。
庭に出すだけと思われがちですが、実は外には意外と多くの「リスク」があります。
例えば、古くなったフェンスから脱走してしまったり、毒を含んだ植物をうっかり口にしてしまうなど。
また、野良猫や他の動物との接触、悪意ある第三者によるいたずらなど、予想外の危険もゼロではありません。
外で過ごすからこそ目が届きにくくなる分、日頃から注意深く環境をチェックしておく必要があります。
気候対策をすること
次に考えたいのは、気候や天候に対する対策です。
室内とは違い、外の変化を直に受けるため、犬にとって快適とは言えない空間も増えてしまいます。
犬小屋は単に屋根があるだけでは不十分であり、風通しや日陰の確保、寒さ対策もしっかり整えることが求められます。
特に夏の猛暑、冬の凍えるような寒さは、人と同じく犬にとっても過酷な環境です。
また、水が蒸発したり凍ったりしないよう、飲み水の管理にも気を配る必要があります。
犬を外で飼うには、こうした気象の変化から守る対策が必要不可欠です。
心のケアとスキンシップを忘れないこと
そして最後に、忘れてはいけないのが「犬の心のケアとスキンシップ」です。
外飼いだとつい、
「犬の姿が見えないから」
「今忙しいから」
といった理由と、「多分大丈夫」という誤った解釈から、犬と関わる時間が少なくなってしまいがちです。
しかし、犬にとって飼い主とのふれあいは「心の支え」そのもの。
毎日声をかけたり撫でてあげたり、散歩の時間を大切にすることで、「一緒に暮らしている」という実感を犬にも持たせることができます。
時には家の中に入れてあげることで、外と中のギャップを埋めてあげるのも良いことですし、もしかしたらそのタイミングで犬は家の中で過ごすことを求めるかもしれません。
感染症の予防をすること
犬を外で飼うと、自然の中で過ごす時間が長いぶん、感染症のリスクにもさらされやすくなります。
だからこそ、「病気の予防」は室内飼い以上に意識する必要があります。
注意したいのが、ノミやダニ、フィラリア症などの寄生虫による感染症です。
草むらや土の上で過ごす時間が多い外飼い犬は、寄生虫の被害を受けやすく、感染に気づいたときには症状が進行しているケースも少なくありません。
これを防ぐために、動物病院にて混合ワクチンやフィラリアの予防を行いましょう。
また、狂犬病ワクチンにおいては、生後3ヶ月以上の犬は毎年1回(原則4月から6月)接種することが法律で義務付けられています。
接種しなければ罰金を課せられ、万が一狂犬病に感染すると治療方法が無いためほぼ100%死亡します。
世界保健機関(WHO)の推計によると、世界では年間におおよそ5万9千人の人が亡くなっています。また、このうち95%はアフリカ、アジア地域での死亡者と言われています。
厚生労働省:狂犬病に関するQ&Aについて
狂犬病予防注射の接種を受けると、「注射済票」が交付されます。
注射済票があることで、ドッグカフェやペットホテル、ペットサロン、ドッグランなどを利用できるようになります。
愛犬のために、そして周りの人や他の動物のためにもワクチンを接種しましょう。
まとめ
外飼いをすること自体が悪いのではありません。
ただ、そこには「気づかい」と「手間」が必要であり、そのひと手間が、犬にとって愛情につながります。
外にいる犬に、孤独や我慢ばかりさせないようにすること。それが、外飼いを選ぶ飼い主の責任でもあります。
あまりにも放っておいたら、犬だって寂しくて眠れなくなりますよ。
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