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犬のためにエアコンをつけるのはもったいない?犬の熱中症のリスクと暑さ対策

電気代がもったいないと、両親がエアコンをつけないんですが、犬の息づかいが荒くて心配です。風通しも悪い家なので、やっぱりエアコンはつけたほうがいいですか。

「電気代がもったいないから」を理由に、犬のためにエアコンをつけない。

これは非常に危険な判断です。


というのも、日本の夏は犬にとっても厳しいものであり、

「風通しが悪い」「室内にエアコンなし」

といった環境は、一気に熱中症のリスクが高まってしまいます。


そこで本記事では、犬にエアコンをつけた方が良い理由と、犬の熱中症や暑さ対策について詳しく解説します。

浅川雅清氏
監修者
浅川 雅清氏
               

2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒。同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務。犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。

2023年より1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修、記事作成など幅広い業務を行っている。

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犬は暑さに弱い!エアコンでリスク回避すべきです

結論から述べると、犬は暑さに弱いためエアコンをつけるべきです。

なぜなら犬は密な毛に覆われコートを着ているようなもの。

汗腺も足の裏にしかないため、人間のように全身で汗をかいて体温を下げることができません。

主に舌を出して唾液を蒸発させること(パンティング)で体温を下げようとしますが、これにも限界はあります。

そのため、気温が高くなれば体の熱が上がり、人と同じく犬も熱中症のリスクが高まります。

では、実際のところ熱中症になる犬はどれほどいるのでしょうか?

熱中症ゼロへ:「愛犬の熱中症」に関する調査データ(2019年度実施)

こちらの調査では、全体の約24.3%が「愛犬が熱中症になったことがある」と答えています。

およそ「4頭のうち1頭」という非常に高い数字です。

気象庁:気候変動監視レポート「日本の年平均気温の経年変化と順位表」

また、日本の気温についてですが、こちらの図表の通り、ここ数年上昇し続けています。

先程の調査データは2019年のものなので、この気温の上昇を踏まえると、恐らく犬の熱中症はもっと多くなっていると推測できます。

熱中症で体温が40℃以上にもなると、脳を含む重要な臓器の機能に障害が起き、体温調節不全、意識障害を起こし、命にかかわる重篤な状態に陥ります。

犬が熱中症にかかると重症化して死亡することが多いので、犬の健康を守るためにまずは室温管理が必須です。

特に夏はエアコンによる冷房で室温を適切に保ち、熱中症を未然に防ぎましょう。

参考:環境省「熱中症はどのようにして起こるのか」

犬は意外と暑がり?適温の目安

犬にとって快適な温度は人間より低いです。

人の場合、暑さ指数(WBGT)が28℃以上になると熱中症のリスクが高まりますが、対して犬は環境気温(気温や室温)が22℃以上とあまり暑くなくても熱中症の症状が見られるそうです。

暑さ指数(WBGT)とは?

体と外気との熱のやりとり(熱収支)に与える影響の大きい、「気温」「湿度」「日射・放射」「風」の要素をもとに算出された指標です。暑さ指数(WBGT)は熱中症リスクを判断する数値として、運動時や作業時だけでなく、日常生活での指針としても活用されています。

引用:熱中症ゼロへ「熱中症の原因・なりやすい環境や暑さ指数(WBGT)について知ろう」

先に述べた通り、犬の体温は人よりも高めであり、汗をかく機能をもっていないため、熱中症になりやすいのです。

基本的には、部屋の温度が23℃〜26℃程度になるようにエアコンを設定しましょう。

湿度については、空気が乾燥しすぎると犬の皮膚・粘膜が傷みやすく、多湿すぎると熱がこもりやすいので、目安は50%程度とされています。

犬種や体格、年齢(子犬・老犬)によって体温を調節する能力が異なるため、犬の様子を見ながら設定温度を調整してください。

参考・引用元:「犬のための家庭の医学」野澤延行(獣医師)

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エアコンが「もったいない」または「無い」場合の対策

確かにエアコンを使うと電気代がかかります。

しかし先程も述べた通り、万が一犬が熱中症になり重症化すると、死亡する可能性もあるので、暑さ対策はしなければいけません。

犬の命はもちろんのこと、動物病院での入院治療や後遺症のリスクも考慮すれば、熱中症にならないよう環境を整えるべきです。

犬は「暑い」と訴えることができません。

どうしてもエアコンが使えない場合は、以下のような方法で暑さ対策をしましょう。

暑さ対策の方法内容
水分補給をする基本的に夏場はマメに水分補給をすること。夏場はすぐに水の温度が上がるので、氷を入れたり凍らせた水を飲ませるようにしましょう。
風通しをよくする窓や扉を開けて風通しをよくします。また、扇風機やサーキュレーター、除湿機を使って、室内の空気を循環させましょう。
断熱対策をする遮光カーテンやブラインドで直射日光を避け、日陰を作るようにします。また、その涼しいポイントへ行き来しやすいように、ドアを開けておきましょう。
冷却グッズの活用犬用の冷却マットやクール素材の服を使用する方法もあります(ただし噛んで誤飲しないよう注意)。また、凍らせたペットボトルをタオルで巻き、犬の近くに簡易クーラーとして置いても冷却効果があります。
日中の外出を避ける夏場はアスファルトが熱くなるので、熱中症のほか、足の裏の火傷も考えられます。そのため散歩や外出は、早朝や夕方の涼しい時間帯にします。やむを得ず歩く場合は、必ず飼い主が地面を触って温度を確認することです。

「エアコンをつけ忘れた」時のリスクと対策

うっかりエアコンをつけ忘れると、室温はどんどん上昇します。

日本は高温多湿で夏が長いため、室内でも十分熱中症が起こりえます。

特に気温25℃以上で湿度が高い日には、犬は人以上に熱中症になりやすいため 、エアコンなしの留守番は非常に危険です。

もしエアコンのつけ忘れが心配になるようなら、事前に以下の対策をしておきましょう。

スマホで管理する

スマホのリモートアプリやペット用の見守りカメラを利用し、外出先でも家の状況を確認できるようにしましょう。

リモートアプリでエアコンをつけたり、見守りカメラで犬を見れるようにしておくと、いつでも部屋の様子をチェックすることができます。

もちろん「今日は暑くならないかな?」と事前に天気予報をチェックし、気象庁が発表する「熱中症警戒アラート」などを参考に、猛暑日を予測して準備しておくことも大事です。

近隣の人に協力をお願いする

万が一エアコンをつけ忘れて外出してしまった時、すぐに戻れない場合は、近隣の方に連絡して状況を確認してもらいましょう。

あらかじめ、

「暑い日は犬が心配だから、何かあったら連絡して!」
「うちの犬の様子がおかしかったら教えてくださいね。」

と伝えておくと、いざという時に助けてもらいやすくなります。

例えば、犬が鳴き続けていたり、「窓際でぐったりしているのが見えた」など、たったそれだけで熱中症のリスクはグンと下がります。

万が一に備えて応急処置を覚えておく

もしも犬の様子がおかしいと感じたときに、病院へ連れていくまでただ黙っていたら危険です。

熱中症の初期症状には、

  • ハァハァと呼吸(パンティング)が早い、激しい
  • 舌や口の中が赤い
  • よだれが多い
  • フラフラしている
  • ぐったりとして動かない

こうした症状が見られます。

もしもこのような場面に遭遇したら、以下のように速やかに応急処置をしましょう。

  • 水を飲ませる
  • 日陰で風通しの良い涼しいところへ移動する
  • 体を冷やす(水をかける、濡らしたタオルで冷やす、氷のうをあてる)
  • 扇風機やうちわで風をあてる

熱中症は、とにかく早く治療を行うことがとても重要になります。

そのため、応急処置のあとは速やかに動物病院へ連れていくこと。

基本的には体を冷やしながら連れて行きますが、反対に体が冷えすぎて体が震えていたりすると、冷やさない方が良い場合もあります。

動物病院へ行く時は事前に状況を説明した上で、獣医師や動物看護師の指示に従ってください。

まとめ

犬にとってエアコンは、決して贅沢なものではなく「命を守る大切な道具」です。

「電気代がもったいない」

という気持ちもわかりますが、犬の健康や安全を最優先に考えることが、飼い主としての責任だと思います。

暑さ対策はエアコンだけでなく、扇風機や冷却グッズなど、いろいろ工夫してみれば費用も抑えられます。

ただ「もったいない」と思うのではなく、犬と一緒に夏を乗り越えられるよう、できることから始めてみませんか?

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