子犬のにおいが気になります。
とにかく臭すぎて困っています。
子犬に出来るニオイ対策はありますでしょうか?
子犬をシャンプーするのは、一般的には生後8週齢を目安としており、とある理由から生後間もない頃に入れるのは推奨していません。
しかしながら、子犬を迎えたばかりの飼い主さんは、
「お風呂に入れられなくてつらい…」
「臭う時はどうすればいいんだ…」
と、子犬ならではのニオイに悩まされているようです。
この悩みを解決するために、初めてシャンプーをするタイミングや、シャンプーをできない時期の臭い対策について、専門的な情報と獣医師の見解をもとに解説します。
子犬の健康を第一に、正しいお手入れ方法を学んでいきましょう。

2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒。同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務。犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年より1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修、記事作成など幅広い業務を行っている。
目次
子犬のシャンプーはいつから?「ワクチン」を踏まえた適切なタイミング
冒頭で述べた通り、子犬のシャンプーは生後8週齢を迎えてからです。
生後間もない頃は、子犬が体温調節をうまくできないことから、シャンプーによって体が冷えてしまい体調を崩すリスクがあります。
それに未成熟時期は、皮膚の乾燥や炎症の原因になることもありますので、当面はシャンプーを控えて体を拭いてあげましょう。
また多くの場合、子犬の頃に混合ワクチンを接種します。
ワクチン接種後は副作用により体調を崩したりしますので、激しい運動やシャンプーを行ってはいけません。
つまり、このワクチンを接種することを踏まえると、シャンプーを行うタイミングは、
「1回目のワクチンを接種してから1週間後」
時期としては、「生後8週齢+1週間」を目安としましょう。
ワクチンとシャンプーの目安 | |
ワクチン1回目 | 生後8週齢 →接種後、1週間経ってからシャンプー |
ワクチン2回目 | 生後12週齢 |
ワクチン3回目、狂犬病ワクチン | 生後16週齢 |
犬も人と同じく、あらかじめワクチンを接種することで、ウイルスや細菌に対する免疫がつき、病気にかかりにくくなります。
そのため、基本的にワクチンは接種しておくようにしましょう。
もしも家ではなく、トリミングサロンでシャンプーをお願いする場合は、ワクチンを3回済ませてからが望ましいです。
子犬のシャンプーの頻度と方法
「子犬のシャンプーは何日おきにすればいいの?」
子犬のシャンプーは成犬とは違い、皮膚も体も繊細なため、適切なペースで行う必要があります。
ここでは月の目安に加えて、子犬のシャンプーの手順を解説します。
「月に何回?」子犬のシャンプーの頻度
犬のシャンプーは人と違って毎日行う必要はありません。
子犬の場合、シャンプーの頻度は月に1~2回が一般的な目安とされています。
繰り返し述べますが、子犬の皮膚は非常にデリケートです。過度なシャンプーは、余計な皮脂を取ってしまい乾燥肌の原因になります。
夏場などニオイの気になる季節であれば、ブラッシングを行い、濡れたタオルで体を拭いてあげましょう。
「どうやって洗う?」子犬のシャンプーの手順
子犬のシャンプーをするにあたって、以下のものを用意しましょう。
- シャンプー、リンス
- ブラシ
- スポンジまたはガーゼ
- タオル
- 洗面器
- ドライヤー
揃えたら次の手順で行っていきます。
①ブラッシング
毛のもつれをほぐし、ほこりを落とすようにして汚れを取り除きます。
ブラッシングを行うと、毛が固まらず洗いやすくなります。
②体を濡らす
35〜37℃のぬるま湯で、お尻、足先から順に体を濡らします。
シャワーをあてる場合は、水圧を弱めにして体に密着させて濡らしてあげます。
最後に顔や鼻、耳などをガーゼやスポンジで優しく濡らしましょう。
③シャンプー
犬用シャンプーをあらかじめお湯を含めて泡立て、背中から順に優しく洗います。
ゴシゴシ擦るのではなくマッサージするように。
顔周りは指で部分洗いをし、目や耳に泡が入らないようにします。
④すすぎ
顔から順にしっかりと洗い流します。洗い残しは皮膚のトラブルの原因となるため丁寧に行いましょう。
⑤リンス
リンスはお湯で溶かし、顔や頭を除いて体全体にかけてあげます。
すすぎは同じく洗い残しのないようにしっかりと流すこと。
⑥タオルで拭く
毛足の長い犬の場合、まず先に手で絞って水分を落とします。
全体的に水分が取れたら、タオルで覆うようにして優しく拭いてあげます。
素早く拭き取れるように、吸水性の良いタオルを使用してください。
⑦ドライヤー
ドライヤーは低温にし、30cm以上離して当てましょう。
熱のこもらない低温ドライヤーだと尚良しです。
足の先、耳の裏、脇の下などは生乾きになりやすいので入念に行いましょう。
尚、シャンプーやリンスは子犬用のものを使用し、ブラシは犬種や毛の長さによって選びましょう。
以下はブラシの選び方と対象例です。
「どのブラシがいい?」犬種に合ったブラシの選び方
ポイント
特徴:柔らかいゴムやシリコン製の素材です。皮膚を優しくマッサージしながら抜け毛を取り除きます。
適した犬種:短毛種(例:ビーグル、パグ、フレンチ・ブルドッグ)や、顔周りや足先など毛の短い部分のケアに適しています。
使用上の注意:長毛種には不向きで、毛が絡まりやすくなる可能性があります。
ポイント
特徴:細かい歯が並んだブラシです。毛のもつれや毛玉をほぐすのに適しています。
適した犬種:長毛種や毛が絡まりやすい犬種(例:マルチーズ、シーズー、ヨークシャー・テリア、トイ・プードル、ビション・フリーゼ)におすすめです。
使用上の注意:ブラッシングの前後に使用し、毛の流れを整えたり、仕上げにツヤを出すのに役立ちます。
ポイント
特徴:細かく密集した金属製のピンがついており、抜け毛や毛玉を取り除きます。
適した犬種:ダブルコートの犬種(例:柴犬、ポメラニアン、ゴールデン・レトリーバー)や、毛量の多い長毛種に適しています。
使用上の注意:皮膚に直接当てると刺激が強すぎる場合があるため、優しくブラッシングします。
ポイント
特徴:先端に丸いピンがついたブラシで、毛の流れを整えたり、ボリュームを出すのに適しています。
適した犬種:長毛種やシングルコートの犬種(例:アフガン・ハウンド、シェットランド・シープドッグ、トイ・プードル、マルチーズ)におすすめです。
使用上の注意:ブラッシングの仕上げや、日常的なケアに使用します。
子犬がシャンプーできないときの対処法
生後間もない子犬、または病気やワクチン接種直後などでシャンプーを控えるべき時期は、どうしても体の臭いが気になることがあります。
子犬自体には、本来ほのかな「子犬の匂い」があるものですが、排泄物が毛についたり、遊んで汚れたり汗をかくことで臭いが強くなるものです。
これを解決するために、以下で子犬にシャンプーができない時の対処法をご紹介します。
いずれもほぼシャンプーを使わずに手軽にできるケアなので、子犬への負担が少なく安全です。
濡れタオルで拭く
シャンプーのできない間は、濡れたタオルで体を拭いてあげましょう。
人肌程度のぬるま湯に浸して固く絞り、子犬の体を優しく拭ってあげます。
汚れがひどい場合は、「子犬用シャンプー」を数滴だけぬるま湯に混ぜると汚れが落ちやすくなります。
顔周りの肌は敏感なので、目に入らないように濡らしたガーゼなどで丁寧に拭きましょう。
拭き終わった後は、必ずタオルで水分をしっかり拭き取り、できればドライヤーを当てて完全に乾かします。
濡れたままにすると体が冷えるだけでなく、雑菌が繁殖して逆に臭くなる可能性もあるので注意してください。
ペット用ウェットティッシュで汚れを拭く
市販のペット用ウェットティッシュ(犬用おしり拭きや体拭き)も便利です。
散歩デビューする前の子犬でも、排泄の後始末や部分的な汚れ落としに使えます。
ただし、人間用の除菌シートやベビー用おしり拭きは避けてください。
人間用のものは、犬にとって有害な成分が含まれていたり、皮膚を乾燥させる可能性があるため使用しないこと。(ペット用はアルコール不使用が基本です。)
必ず「ペット用」と明記されたものを使いましょう。
またペット用でも香料が強すぎると、子犬が舐めたときに害になる恐れがあるため、できるだけ無香料で低刺激のものを選ぶと安心です。
ウェットティッシュだけで完璧に綺麗にするのは難しいですが、部分的な汚れや臭いをすばやく取る時に便利です。
ブラッシングで汚れと匂いを除去
ブラッシングは最も簡単な臭い対策です。
ブラシで毛をとかすことで、ほこりやフケ、抜け毛など臭いの元となる物質を取り除けます。
子犬が長毛なら毛先が丸型のピンブラシ、短毛であればシリコン系のラバーブラシが適しています。
短時間でも毎日ブラッシングしてあげると、血行も促進され、皮膚の新陳代謝が良くなります。
また、ブラッシング後に濡れタオルで拭うと、汚れが取れやすくなります。
ブラッシングに慣れておくことで、後にシャンプーやトリミングをするときもスムーズに行いやすくなります。
ドライシャンプーの活用
人間と同じく、犬にも犬用のドライシャンプーがあります。
犬用のドライシャンプーとは?
犬用のドライシャンプーとは、水で洗い流さずに、汚れや臭いを吸着・中和する製品。スプレー、泡、パウダータイプなどがあります。
使い方は商品にもよりますが、基本的には被毛にスプレーまたは泡をなじませ、指先でマッサージするように広げてからタオルで拭き取ります。
その後にブラッシングすると余分な汚れが落ちて、毛がさらさらに仕上がります。
ドライシャンプーを使う際の注意点は、子犬用・低刺激のものを選ぶこと、そして舐めすぎないように素早く拭き取ることです。
成分としては、植物由来の消臭成分や重曹(ベーキングソーダ)を含むものが臭いを抑える効果があります。
ただし、重曹パウダーをそのまま振りかけて使うタイプは、子犬が舐めてしまうリスクがあるのであまりお勧めしません。
市販のペット用ドライシャンプーを利用する際は、製品の使用方法に沿って正しく使い、万が一、皮膚に異常が出たら使用するのをやめてください。
周囲を清潔にする
子犬自身だけでなく、寝床や毛布、おもちゃも定期的に掃除しましょう。
たとえ子犬が綺麗だとしても、抜け毛やふけ、皮膚の油などが、細かな汚れが身の周りに付着しています。
そのため、洗えるものは洗濯し、天日干しや消毒を行って清潔に保つこと。
風邪をひく、下痢をするといったリスクが軽減できます。
消臭スプレーを使う場合は、犬用で無香料・低刺激のものを選びましょう。
人間用の除菌シートなどは、皮膚のトラブルのもとになるためNGです。
シャンプーの前に準備すべき注意点
初めて子犬をシャンプーする際は、以下の点に気を付けましょう。
お風呂場の環境を整える
お風呂場や部屋を暖かくしておき、シャンプー後に子犬が冷えないようにします。
室温は21〜25℃前後を保つと良いので、冬場は部屋を温め、夏は扇風機をあてるなどして調整しましょう。
そして子犬に使うお湯は、人肌より少しぬるめの35〜37℃程度が目安です。
熱すぎると皮膚を傷める原因になり、逆に冷たいと体温が下がってしまいます。
また、洗っている最中もなるべく体を冷やさないよう、シャワーは短時間で済ませること。10分以内を目安にしましょう。
子犬のコンディションに合わせる
シャンプーをする際は、子犬のコンディションが良いタイミングを選びましょう。
シャンプーは子犬にとって、想像以上に体力を使うイベントです。
そのため、体調や気分が万全のときに行うのが理想的。食事の様子などを見ておくと判断もしやすくなります。
また、シャンプー中は緊張から立ったまま震えていたり、水や音に敏感に反応したりすることがあるので、様子をみながら早めに済ませましょう。
場合によっては、少し疲れていた方が落ち着いて洗わせてくれることもあります。
そしてコンディションが悪そうなときは、また別の日にするように。
無理に進めてしまうと、シャンプーが嫌いになってしまうかもしれません。
徐々に慣らす
いきなり全身にシャワーをかけるのではなく、最初は足元などを濡れたタオルで拭いて、お風呂に入る練習から始めましょう。
少しずつお湯の音や浴室に慣れさせて、嫌がらなければ体にお湯をかけるようにします。
怖がる子には無理強いせず、褒めながら少しずつ慣らすところもポイントです。
褒める、おやつを与える、といった行為を交えて浴室に入る練習をするなど、段階的に慣らすのも効果的です。
もしくは、濡れたタオルで全身を拭いて、お風呂場の雰囲気に慣らしてから進めると、子犬の負担も少なくなります。
まとめ
子犬のシャンプーは、「いつやればいいんだろう」「どうやって慣らそう」と迷うものです。
でも、焦らなくても大丈夫。無理せず、子犬のペースに合わせて進めていくことが一番です。
ここで述べた通り、臭いが気になる時は洗わずにできるケア方法がたくさんあります。
できることから少しずつ取り入れながら、清潔でありつつ、ワンちゃんを心地よくさせてあげましょう。