老犬用のベッドはどう選んだらいいんだろう?
老犬になると、足腰の弱りや寝ている時間の長さから、ベッドの重要性がぐっと高まります。
もしもあなたの愛犬に、
「最近起きるのがつらそう…」
「同じ姿勢でいることが増えた」
このような変化に気づいたら、ベッドの見直しが必要かもしれません。
そこで本記事では、老犬が快適に過ごせるベッドの選び方や、注意すべきポイントについて解説します。

2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒。同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務。犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年より1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修、記事作成など幅広い業務を行っている。
老犬に最適なベッドの選び方とは?
老犬のベッドを選ぶ際には、加齢に伴う身体の変化や健康状態を考慮することです。
獣医師の意見や専門的な情報を基に、以下で老犬のベッドを選ぶポイントを解説します。
体圧分散性の高いベッドを選ぶ
老犬は関節炎や筋肉の衰えにより、長時間同じ姿勢でいることが多く、これにより床ずれのリスクが高まります。
これを避けるために、体圧を均等に分散できるベッドがおすすめです。
特に、低反発や高反発のウレタンを使用したベッドは、体の負担の軽減、睡眠の質といった効果が見込めます。
「低反発」素材の特徴、適正な犬とサイズ
▷メリット
○分散性に優れている
○リラックス効果がある(柔らかいため)
○保温性が高い
▶︎デメリット
⚫️通気性が悪い
⚫️起き上がりにくい(沈んでしまう)
⚫️適正な犬とサイズ
適切な犬とサイズ
- 主に小型犬〜中型犬
- 寒がりな犬
「高反発」素材の特徴、適正な犬とサイズ
▷メリット
○寝返りがしやすい
○通気性がよい
○比較的洗濯可能な製品が多い
▶︎デメリット
⚫️硬さから体に痛みを感じる場合がある
⚫️音が出ることがある(音に敏感な犬には不向き)
適切な犬とサイズ
- 大型犬
- 肥満傾向のある犬
- 暑がりな犬
このように、低反発と高反発ではそれぞれ利点が異なります。
犬種やサイズに合わせて選ぶのも大事ですが、愛犬が好みそうなものを選ぶことも忘れずに。
季節に応じた素材を選ぶ
犬は元々体温調節が苦手な生き物ですが、老犬になるとより体温調節が難しくなることから、熱中症や低体温症になりやすくなります。
そのため、季節に応じた素材選びも重要になります。
以下は季節に応じた素材選びのポイントと注意点です。
「夏」に適した素材選びと注意点
【適した素材】
・通気性の良いメッシュ素材
・ひんやりと感じる接触冷感素材
・スチール製の足付きベッド
注意点
冷感素材は「滑りやすい」という特徴があるため、足腰が弱った老犬が立ち上がる際にバランスを崩す可能性があります。
滑り止め加工がされていたり、滑りにくい床の上に置きましょう。
また、夏場は直射日光が当たったり、風通しの悪い場所は避けること。
エアコンの風も、体温調節が難しい老犬にとって負担になるので、直接当たらないようにしましょう。
「冬」に適した素材選びと注意点
【適した素材】
・保温性と肌触りの良いフリース素材
・ヒーター付きベッド
・ドーム型ベッド
注意点
ヒーター付きのベッドや電気毛布を使用する際は、過度な加熱による低温やけどや脱水症状に注意が必要です。
適切な温度設定を行い、備え付けのタイマー機能などもうまく活用して温度を調整しましょう。
また、冬場は室内が乾燥しやすく、皮膚や粘膜が痛みやすくなります。
その場合は加湿器を使用して湿度を保ちましょう。(※犬に適した湿度は50%前後と言われています)
老犬に合わせた機能性
愛犬の年齢や健康状態、介護の必要性に応じた機能性を考慮して選びましょう。
寝たきりで介護が必要であったり、歩行が困難な老犬には、以下のような機能を備えたベッドが適しています。
- 体圧分散性、滑り止めは重要
- 丸洗いできる素材
- 通気性と速乾性
- 防水または洗濯可能なカバー(排泄の失敗や食べこぼし防止)
- 持ち手付き(乗せたまま運べる)
- 低い設計(転倒のリスクを軽減)
あまり身動きの取れなくなる老犬には、身体の負担を軽減できるものに加え、洗濯のしやすさも大事なポイントです。
老犬は尿漏れやトイレの失敗が懸念されるので、洗えるベッドやカバーに加えて、マナーパンツ、ペットシートも併用すると良いです。
またベッドの素材も、ダニが繁殖したり虫が寄りつきやすい素材を避けることで、皮膚炎などの病気にもかかりにくくなります。
老犬用ベッドはいつ買い替えるべき?
老犬にとって快適に眠れる環境は、健康寿命を延ばすことに繋がります。
特にベッドは、毎日長時間使用するため、状態の劣化が老犬の身体に与える影響も大きくなります。
適切なタイミングでベッドを買い替えることにより、関節痛や床ずれといった体の負担に加え、ストレスも軽減することができるでしょう。
以下で、ベッドの買い替えのタイミングを解説します。
ベッドのへたりや型崩れが目立つ場合
老犬の体をしっかり支えるためには、ベッドのクッション性と体圧分散性は不可欠です。
ベッドを長期間使い続けると、素材がへたって硬くなったり、中央部分が沈んだりして、均等に体を支えられなくなります。
例えば、高反発マットを使っていても、使用から1年程度で中央部分が凹んでしまい、寝ている時に姿勢が傾いてしまうことがあります。
これが関節への負担や筋肉疲労の原因になるのです。
犬が起き上がる時に踏ん張りにくくなっていたり、寝返りすることが減っているように感じたら、ベッドが型崩れしていないかチェックしてみてください。
汚れや臭いが取れにくくなった時に
老犬になると、トイレの失敗や毛の抜け落ちが増えるため、ベッドも汚れやすくなります。
防水カバーや洗濯できる素材のものでも、長く使っていれば次第に汚れとニオイが染み付き、衛生面でよくありません。
洗濯してもなんとなくニオイが残ると感じたら、素材の奥にまで汚れが入り込んでいる可能性があります。
強い汚れやニオイは犬のストレス、皮膚病などの原因にもなるので、衛生面が気になるようであれば思い切って買い替えると良いでしょう。
季節の変わり目や体調の変化に合わせて
老犬は自律神経の機能が低下するため、うまく体温を調整できず、暑さや寒さに弱くなってしまいます。
そこで季節に合った素材や、犬の体調を改善するような機能性を備えたベッドにしましょう。
夏は通気性に優れたメッシュ素材や冷感ジェルマット付き、冬には保温性の高いフリース素材やふわふわしたソファに替えると、体温調節の助けになります。
また、関節痛が出てきた、寝る時間が増えたといった体調の変化が見られる場合にも、それに対応したベッド選び(体圧分散や出入りのしやすい低床設計など)が選ぶポイントになります。
犬がベッドを嫌がるようになった場合
「以前は喜んで寝ていたのに、最近ベッドに入らなくなった…」
愛犬にそんな変化が見受けられたら、ベッドの快適性が損なわれているサインかもしれません。
もしも、足を踏み入れてもすぐに出て行ってしまうとか、床や別の場所で寝るようになった、といった行動が見られたら注意が必要です。
犬は言葉で訴えられないため、こうした行動の変化からコンディションを読み取りましょう。
特に老犬は小さな不快にも敏感になりやすく、且つうまく訴えることもできなくなるので、早めの対応で体調の悪化を防いであげましょう。