老犬がうまくご飯を食べられません。
何か良い方法はありますか?
老犬が食事を残したり、舌をうまく使えなくなっていませんか?
実はこれ、加齢や体調の変化が関係している可能性があります。
シニア期に入った犬は、舌や口の動きが衰えてしまい、うまく噛めないことでご飯を食べなくなることも少なくありません。
そこで本記事では、愛犬が舌をうまく使えない理由と、その背後にある病気の可能性、そしてご自宅でできる食事介護のポイントを詳しく解説します。

2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒。同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務。犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年より1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修、記事作成など幅広い業務を行っている。
目次
老犬が舌をうまく使えない原因
飼っている老犬が舌をうまく使えないのは、主に「加齢」や「病気」が原因です。
歳をとると筋力が落ちてしまい、咀嚼する力が弱くなったり、口を閉じることができなくなります。
「病気を患った」または「病気の後遺症」によっても、ご飯をうまく食べられなかったり、食欲不振になるケースもあります。
考えられる病気は次の通りです。
●神経系(舌咽神経や顔面神経の麻痺、前庭疾患など)
●口腔疾患(歯周病、舌の病変、口腔がんなど)
●内臓疾患(胃腸炎、肝不全、腸閉塞など)
例えば口腔に関しては、老犬になるほど歯周病を発生しやすくなったり、歯が抜けて咀嚼ができなくなるといったことがあります。
もしも愛犬に、以下のような症状が見られる場合は、早めに病院へ行って診察を受けましょう。
- 頭が傾いたままになる
- 目が上下左右に揺れる
- いつもよりゆっくり食べる
- 水も飲まない
- 嘔吐や下痢をする
- 口の中から出血している
- ぐったりしている
- 同じ方向にぐるぐる回る
- ふらふらしている
- 体が震えている
- よだれが多い
- 呼吸が荒い
また、身体が思うようにいかないことで、ストレスを感じて食べなくなったり、フードが合わなくなったとも考えられます。
体が病を患っているのではなく、心が病んでいるのかもしれません。
日頃から愛犬の表情や仕草をよく観察し、ちょっとした変化に気付いてあげましょう。
実際に犬がフードを食べない時に飼い主がとった行動
さて、実際に犬がご飯を食べない時に、飼い主はどのような行動をとっているのでしょうか?

こちらの調査では、犬がフードを食べない時に「フードの種類を変更した」という人が大多数を占めています。
次いで「柔らかくした」「見守る」と答えた人が多く、いつも食べているものを口にしないのであれば、まずは「フードを見直す」というところから始めている人が多いようです。

そしてフードを食べない犬に対して、飼い主が何らかの行動を起こしたことにより、90%以上の人が「改善した」と答えています。
とは言え、こちらはシニア層に限った解答ではありません。
シニア犬の場合、どのようにすればご飯を食べてくれるようになるのでしょうか?
次で、「シニア犬が舌をうまく使えない場合」に絞った対処法を述べていきます。
老犬が舌をうまく使えない時の対処法
老犬になると、食事中に舌をうまく使えず、食べこぼしが増えたり、途中でやめてしまうことがあります。
これは舌の筋力低下や、口が開かないといった衰えが原因で、舌をうまく使えないことがあります。
そこで以下で、日常のケアで実践できる対処法をご紹介します。
フードの食器を少し高い位置に置く
普段ご飯をあげる時、フードボウルなどに入れて床に置きますよね。
しかし老犬になると、低い位置から飲み込むことが困難になるので、置き場所を改善しなければいけません。
そこで食べ物を飲み込みやすいように、フードボウルは床に置くのではなく、台を使って犬の肘ぐらいの位置にします。
ご飯の時に口の位置を上にあげることで、喉に詰まったり、口からこぼしにくくなります。
もしも犬が自分でご飯を食べることが困難な場合は、手で食べ物を口元に運んであげましょう。
強制給餌(きょうせいきゅうじ)する
歳をとると、咀しゃく(噛む)や嚥下(飲み込む)の機能が低下します。
こうした行為ができない場合は、強制給餌(きょうせいきゅうじ)で食事を与えましょう。
強制給餌とは、病気や加齢が原因で、自分で食事ができない、食事をしようとしない時に強制的にご飯をあげることです。
咀嚼が困難なため、固形物は避け、流動食をスプーンやシリンジを使って与えます。
口に入れるだけで吐き出してしまう場合は、喉の奥のあたりまで近づけて、飲み込める位置を探ってみましょう。
粉状の介護食やミルクなどは水分量を調整し、愛犬の様子を見ながら食べさせてみてください。
口腔体操、舌の筋トレを行う
老犬になると、舌や口周りの筋肉が衰えて口が開けにくくなります。
そのままでは食べることができなくなってしまうので、口腔体操や意図的に舌を動かすようにしましょう。
例えば少し固いおやつを与えて、何度も噛むことによって顎が強くなり、唾液もよく出るようになります。
また咀嚼の間に舌も動かすので、舌の運動にもなります。
但し、あまり固いものを与えると歯が折れるリスクもあるので、様子を見ながら与えるようにしましょう。
顔や頭のマッサージ
顔や頭の周りをマッサージすることで、筋肉がほぐれて口が開きやすくなります。
マッサージをする際、まずは犬がリラックスできる体勢にします。
準備が整ったら、眉間のあたりから毛並みに沿って指先で外へ流します。
おでこ、目尻、耳、頬に向けて、ゆっくりとほぐしていきます。
あまり強く押すと返って痛めてしまうので、犬の表情を見ながら満遍なく行いましょう。
動物病院に行く
舌に異常を感じたら、早めに動物病院で診察を受けましょう。
犬は舌を出すことで、体温を調節したり、気持ちがリラックスしていることを示しますが、舌の色や形状の変化は、体に何かが起きていることを表しています。
犬の舌の色によるサインは以下の通りです。
舌の色 | 症状、病気 |
ピンク | 健康 |
赤 | 暑い、熱がある |
黄 | 黄疸(おうだん)、肝炎など |
紫 | チアノーゼ(酸素不足)、喘息、肺炎など |
白 | 貧血 |
黒 | ほくろ、メラノーマ(悪性腫瘍) |
犬の舌はよく見えるところなので、日頃からよく観察し、犬の健康チェックを行いましょう。
まとめ
以上の通り、老犬が舌をうまく使えない原因には、加齢による筋力低下のほか、神経系・口腔内・内臓などの疾患も考えられます。
これにより、食事中に舌をうまく動かせず、食べこぼしや食欲不振が起こることがあるのです。
愛犬の食事をサポートをしつつ、なにか異常が見られた場合は、早めに動物病院で診察を受けましょう。